代償金を払わせる遺言(遺言文例 92)
遺言書
第1条 遺言者は、遺言者の有する不動産その他一切の財産を、長男佐藤一郎(昭和52年4月4日生)に相続させる。
第2条 長男佐藤一郎は、前条記載の相続を受ける負担として、それぞれ金100万円宛を、長女中村真央(昭和45年5月5日生)、次女宮崎静香(昭和49年6月6日生)、三女田中ゆり(昭和51年3月3日生)の3名に代償金として支払うものとする。
第3条 遺言者は、祖先の祭祀を主宰すべき者として、長男佐藤一郎を指定する。
第4条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として、次の者を指定する。
福岡県久留米市中央町38番地23
行政書士 宮崎 信幸(昭和33年3月3日生)
2 遺言執行者に対する報酬は、金30万円とする。執行報酬については、長男佐藤一郎が負担すべきものとする。
付言 この家は兼業農業です。これまで朝早くから夜遅くまで農作業をして来ましたが、貯金はほとんどありません。3人の娘たちには何も残すことができずに申し訳なく思っています。そこで、今の家と農地は跡継ぎの一郎にやることにしました。その代わりに、一郎がみんなに一郎の貯金から金を渡すことになりました。受け取りにくいかも知れないが、一郎も納得してくれています。少ないけど、農業だけでは食べて行けない状況であることはみんなも承知していると思うので、了解してください。そして、正月やお盆には私とお母さんの墓参りに来てくれることを願っています。以上のような私の気持ちを理解して、みんな仲よく暮らすよう希望します。真央へ、静香へ、ゆりへ、そして一郎へ。
平成27年5月7日
住所 福岡県久留米市山本町1111番地123
遺言者 佐藤 太郎 印
負担付遺贈の一種である代償金を払わせる遺言です。前もって、負担を負わせる受遺者の了解を取っておくべきでしょう。そうでないと、遺贈の放棄(そんな負担があるなら、いりませんとすること)を受遺者がすることもあります。また、推定相続人とは別の遺言執行者を付けた方が、遺言の内容がより確実に実現されるはずです。
上の遺言書は、自筆証書遺言の見本です。全てを自分でペンを使って書き、必ず日付を入れてください。印鑑は認印でも構いませんが、実印が良いでしょう。作成後、封筒に入れて封印をし、妻に預けておくと良いでしょう。
当然、公正証書の原案(下書き)としても利用できます。公正証書遺言が、より安全で安心です。