養女に出した娘への遺言(遺言文例 68)

遺言書

第1条 遺言者は、遺言者の有する預貯金の中からそれぞれ金100万円宛を、長女中村真央(昭和45年5月5日生)、次女宮崎静香(昭和49年6月6日生)、三女田中ゆり(昭和51年3月3日生)の3名に相続させる。

第2条 遺言者は、前条記載の預貯金300万円を除くその他一切の財産を、長男佐藤一郎(昭和52年4月4日生)に相続させる。

第3条 遺言者は、祖先の祭祀を主宰すべき者として、長男佐藤一郎を指定する。

第4条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として、次の者を指定する。
 福岡県久留米市中央町38番地23
 行政書士  宮崎 信幸(昭和33年3月3日生)
 2 遺言執行者に対する報酬は、金30万円とする。執行報酬については、遺言者の有する預貯金から優先的に支出するものとする。

付言 この家の農業は、戦後の開拓地として私達夫婦で始めたものです。よって、収穫も少なく貧乏であったことは子供達もよく知っていることのはずです。そんなこともあり、三女のゆりを養女として出すことになりました。その際は、亡き妻(あなた方のお母さん)は大反対をしました。でも、私が無理やり決めたことです。そのことをお母さんは亡くなる日まで後悔していました。ゆりを手元に置いて育てたかったと何度聞かされたことか分かりません。しかし、ゆりは裕福な養父母の家庭で育ち、東京の大学まで出してもらってよかったと思っています。ゆりも他人には言えない寂しいことも多かったと思いますが、よく頑張ったとうれしい気持ちで一杯です。また、養父母の田中さん夫妻には心より感謝しています。できることなら、已む無く養子に出さざるを得なかったことをゆりには許してほしいと思っています。他の3人の子供達は高校までしか出してやれずにすまなかったという気持ちです。ただ、ひと様には迷惑をかけない大人になってくれて安心しています。今の家と農地は跡継ぎの一郎にやることにしました。農業だけでは食べて行けない状況であることはみんなも承知していると思うので、了解してください。そして、正月や盆には私とお母さんの墓参りに家族みんなで来てくれることを願っています。以上のような私の気持ちを理解して、みんな仲よく暮らすよう希望します。真央へ、静香へ、ゆりへ、そして一郎へ。

平成27年5月7日

住所 福岡県久留米市城島町999番地
遺言者  佐藤 太郎 


※補足説明 関連遺言 関連遺言 関連遺言

 事情があって養女(養子)に出した子がいる親の遺言です。どのような事情であったか、どのように思っていたかを正直に書くしかありません。遺言がないと遺産分割協議が困難となる可能性があります。一般的には、生みの親より育ての親で、一緒に暮らさないと親兄弟との情愛は薄くなりがちのようです。

 上の遺言書は、自筆証書遺言の見本です。全てを自分でペンを使って書き、必ず日付を入れてください。印鑑は認印でも構いませんが、実印が良いでしょう。作成後、封筒に入れて封印をし、妻に預けておくと良いでしょう。
 当然、公正証書の原案(下書き)としても利用できます。公正証書遺言が、より安全で安心です。