養子に来た人への遺言(遺言文例 67)
遺言書
第1条 遺言者は、遺言者の有する預貯金の中から金300万円を、長女中村真央(昭和45年5月5日生)に相続させる。
第2条 前条記載の金300万円を除く預貯金全部を次女宮崎静香(昭和49年6月6日生)と養子宮崎次郎(昭和50年5月5日生)に各2分の1の割合にて相続させる。
第3条 遺言者は、遺言者の有する不動産全部を次女宮崎静香に相続させる。
第4条 遺言者は、前3条記載の財産を除くその他一切の財産を次女宮崎静香に相続させる。
第5条 遺言者を債務者とする一切の債務は、次女宮崎静香と養子宮崎次郎が負担すべきものとする。
第6条 遺言者は、祖先の祭祀を主宰すべき者として、次女宮崎静香を指定する。
第7条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として、養子宮崎次郎を指定する。
付言 以上のような遺言の内容にした理由を少し説明します。私は黒川温泉の老舗旅館に嫁いできました。夫(あなた方の父親)は甲斐性がなく、苦労させられました。でも、次女の静香が旅館を継いでくれるようになってほっとしました。また、次郎さんが養子に来て静香と結婚してくれたことには感謝しています。次郎さんも慣れない仕事でたいへんだったと思います。二人が手伝ってくれたお蔭で、去年別館も作ることができました。これからも「黒川温泉一番館」を盛り立てて下さい。また、長女真央は、東京の女子大へ進学し、東京で知り合った雄一さんと結婚して幸せに暮らしているようなので安心しています。実家の旅館のことは静香と次郎さんに任せるので了解してください。でも、真央の家族が温泉に遊びに来た際は遠慮なく過ごすようにしてください。そのことは、静香と次郎さんも納得しています。二人の娘たちとその家族が、みんな仲よく元気に暮らすよう願っています。
平成27年5月7日
住所 熊本県阿蘇郡南小国町黒川温泉1番地
遺言者 宮崎 さゆり 印
旅館経営者が養子を含む後継者に相続させる場合に使う遺言です。どのような内容にすれば、スムーズに後継者に事業承継できるか、前もって検討すべきです。よって、事前に行政書士や税理士などの専門家と相談されることをお勧めします。
上の遺言書は、自筆証書遺言の見本です。全てを自分でペンを使って書き、必ず日付を入れてください。印鑑は認印でも構いませんが、実印が良いでしょう。作成後、封筒に入れて封印をし、妻に預けておくと良いでしょう。
当然、公正証書の原案(下書き)としても利用できます。公正証書遺言が、より安全で安心です。