子供のいない後妻の遺言(遺言文例 57)

遺言書

第1条 遺言者は、遺言者の有する全ての財産を包括して次の者3名にそれぞれ3分の1の割合にて遺贈する。なお、不動産の持分は各3分の1とする。
 久留米市中央町1番地1、田中幸子(昭和44年4月4日生)
 久留米市野中町1番地1、伊藤一郎(昭和45年9月9日生)
 久留米市荘島町1番地1、中村えり(昭和47年5月5日生)

第2条 前条記載の3名の内、いずれかの者が遺言者より先に死亡した場合、遺言者は、遺言者の有する全ての財産を残りの2名にそれぞれ2分の1の割合にて包括して遺贈する。なお、不動産の持分は各2分の1とする。

第3条 遺言者は、祖先の祭祀を主宰すべき者として、第1条記載の伊藤一郎を指定する。

第4条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として、第1条記載の伊藤一郎を指定する。

付言 私はあなた達の亡き父である太郎さんの所に後妻として来ました。当事、あなた達も育ち盛りで私も苦労したものでした。しかし、自分の子供として大切に育てたつもりです。それは、太郎さんも理解してくれていました。太郎さんの遺言でもって、財産のほとんどは私が相続しました。その際、あなた達が一言も文句も言わなかったことにはびっくりしました。そして私の育て方は間違っていなかったことを再確認しました。そこで、太郎さんの遺言の中にも書いてあったように、財産があなた達に行くように私も遺言を作成しました。私がなくなったら、太郎さんと同じ墓に入れてください。家は3人で相談して処分しても構いません。あなた達3人とそれぞれの家族が幸せに暮らすことを願っています。私の子供として接してくれて本当にありがとう。

平成27年5月6日

住所 福岡県久留米市中央町1番地1
遺言者  伊藤 明子 


※補足説明

 子供がいない後妻である場合に使う遺言です。先妻との子供と後妻間には相続する権利がありません。遺言がなければ、後妻の財産は後妻の兄弟等に行くことになります。後妻の財産が夫(父)の財産であった場合は、遺言を作成しておくことが大切です。その前提として、夫も遺言を作成しておくべきでしょう。文例のような良好な家族関係は少ないのかも知れません。

 上の遺言書は、自筆証書遺言の見本です。全てを自分でペンを使って書き、必ず日付を入れてください。印鑑は認印でも構いませんが、実印が良いでしょう。作成後、封筒に入れて封印をし、妻に預けておくと良いでしょう。
 当然、公正証書の原案(下書き)としても利用できます。公正証書遺言が、より安全で安心です。