行方不明者がいる場合の遺言2(遺言文例44)

遺言書

第1条 遺言者は、遺言者の有する預貯金の中から金500万円を、長男宮崎一郎(昭和47年6月6日生)に相続させる。
 2 長男宮崎一郎は5年以上音信不通であり、もし遺言者の相続開始後、更に1年以上音信不通であった場合には、当該金500万円は、次男宮崎次郎(昭和49年1月5日生)に相続させる。

第2条 遺言者は、前条記載の金500万円を除く遺言者の有する不動産その他一切の財産を、次男宮崎次郎に相続させる。

第3条 遺言者は、祖先の祭祀を主宰すべき者として、次男宮崎次郎を指定する。

第4条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として、次男宮崎次郎を指定する。
 2 遺言執行者は、相続財産に含まれる預貯金債権の名義変更、解約、払戻し等のほか、この遺言を執行する上での一切の権限を有する。

付言 長男一郎は長い間行方不明の状態で心配しています。私との喧嘩が家出の直接の原因だったことは残念に思っています。お母さんも一郎のことを一番心配していました。日本のどこかで元気に暮らしているものと信じています。それは、家の後を継いだ次郎も同じです。もし、遺言を残さずに私が死ぬと、自営をしている次郎が困ることになるのではと考え、以上のような内容にしました。ぜひ、私が元気なうちに帰ってきてほしいと願っています。帰ってきさえすれば、昔のことは水に流して、次郎と3人で酒でも酌み交わしたいです。その願いが叶わなかったとしても、次郎の家族が温かく迎えてくれるはずです。先に旅立ったお母さんと共に、一日も早く帰ってきてくれることを願っています。

平成27年4月30日

住所 福岡県久留米市中央町38番地23
遺言者  宮崎 信幸 


※補足説明

 行方不明者がいる場合の遺言に使う文例です。音信不通、所在不明者がいると、相続開始後の遺産分割協議ができません。遺言書を残しておくことは、相続人の苦労を少なくします。一方、行方不明者にはそれなりの事情や原因があるはずです。できれば家に帰りたいという希望を持っている人も多いことでしょう。そこで場合によっては、付言の中に温かい言葉を入れておくことも大切です。

 上の遺言書は、自筆証書遺言の見本です。全てを自分でペンを使って書き、必ず日付を入れてください。印鑑は認印でも構いませんが、実印が良いでしょう。作成後、封筒に入れて封印をし、妻に預けておくと良いでしょう。
 当然、公正証書の原案(下書き)としても利用できます。公正証書遺言が、より安全で安心です。