施設に寄付する遺言(遺言文例 72)

遺言書

第1条 遺言者は、遺言者の有する預貯金その他一切の財産を、遺言者が幼年時に入所していた下記の養護児童施設に包括して遺贈する。
     記
 住所 長崎県雲仙市瑞穂町大正甲110番地
 名称 養護児童施設 みずほ園

第2条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として下記の者を指定する。
     記
 福岡県久留米市六ツ門町1番地1
 行政書士  古賀 省吾
 昭和44年2月26日生
 2 遺言執行者は、相続財産に含まれる預貯金債権の解約、払戻し、動産の処分等のほか、この遺言を執行する上での一切の権限を有する。
 3 遺言執行者は、遺言者の有する不動産全部を任意に売却し、現金化すべきものとする。その際、買主名義への所有権移転登記とその前提としての相続登記において相続人の代理人として申請手続ができるものとする。
 4 遺言執行者に対する報酬は、相続開始時の遺言者の有する相続財産の合計金額(不動産については固定資産評価額)の3%とし、遺言者名義の預貯金より優先的に支出できるものとする。

付言 私は、小学校3年から高校3年まで、みずほ園にて育ちました。当時は、親がいない寂しさから、ぐれて喧嘩をよくしていました。しかし、当時の山口園長先生をはじめ、施設のみなさんには厳しい中にも暖かさがあり、心より感謝しています。施設を出て、大阪で働くようになりましたが、仕事が長続きせず、定職に着くこともできず、何度挫折しかけたか分かりません。その都度、施設を出る際に園長先生から言われたことを思い出しました。「自分に負けたらいかんぞ」。今こうして、人並みの生活ができているのも施設のお蔭だと思っています。そこで、これまで私が蓄えたわずかな財産を施設に寄付することにしました。できれば、パソコンなどを購入して、施設に入所している子供達がインターネットなどの知識が得られるようにして貰いたいと思っています。私には、遺留分を有する相続人はいません。よって、遺言執行報酬や税金等を除いて全額寄付できると思います。古賀先生には、死後委任事務もお願いしていますので大丈夫だと安心しています。施設の子供達に、頑張るよう伝えてください。それでは、よろしくお願いします。

平成27年5月7日

住所 福岡県久留米市中央町1番地1
遺言者  佐藤 太郎 


※補足説明 関連遺言 関連遺言 関連遺言 関連遺言 関連遺言

 施設に寄付する場合に使う遺言です。死後の寄付は法律上、「遺贈する」と記載します。葬儀その他を頼める親族がいない場合は、遺言執行とは別に、死後委任事務を依頼しておく必要があります。セットで行政書士などの専門家に依頼したが安心です。

 上の遺言書は、自筆証書遺言の見本です。全てを自分でペンを使って書き、必ず日付を入れてください。印鑑は認印でも構いませんが、実印が良いでしょう。作成後、封筒に入れて封印をし、妻に預けておくと良いでしょう。
 当然、公正証書の原案(下書き)としても利用できます。公正証書遺言が、より安全で安心です。